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デジタル化で青少年交流を促進

最新のベルリン日独センター機関誌jdzb echoにも掲載されているこの記事では、事務総長のユリア・ミュンヒが現在ある多様な日独青少年交流プログラムへの関心をさらに高めていくためには、さまざまな手段を使っていくことの重要性について触れています。

Echo_Muench_Beitrag

 ベルリン日独センター事業における最も重要な目標のひとつは、日本とドイツの未来の政策決定者である若者の対日・対独関心を喚起し、親日家・親独家を育てることにあります。そのための最良の方法は、若者が相手国を訪問し、五感を通じてその国の文化を吸収し、同年代の若者と出会い会話し、そしてまた世代を超えた知己を得ることではないでしょうか。

 そのための交流プログラムとしてベルリン日独センターは独連邦家庭高齢者女性青年省の「子ども青少年計画」および日本国文部科学省から助成金を得て、日独の勤労青年青年リーダー(ボランティア活動に従事している青年)、青少年指導者(児童・青少年福祉分野の専門家)を対象とした交流プログラムを提供しています。また、独連邦教育研究省および日本国外務省委託プログラム「日独若手研究者招聘プログラム」では大学や民間研究所の研究者が相手国を訪れ、官民の研究所を視察訪問し、その国の研究事情を垣間見ることができます。民間の資金提供を得て実施しているプログラムは幹部候補者を対象とする「日独ヤングリーダーズ・フォーラム」です(資金提供機関:大同生命保険株式会社、一般財団法人森記念製造技術研究財団、一般財団法人山岡記念財団、ヤンマーホールディングス株式会社、ユアサM&B株式会社)。さらに、日独の高校間の持続的な交流を目的とした高校生交流プログラム「JDZB-Science Youth Program」(財源支援:OLYMPUS Europa SE & Co. KG)も実施しています。
 

ドイツへの道――日本への道

 ベルリン日独センター以外にも日独の青少年が初めて出会う機会を設け、その出会いを持続可能なものにするよう努めている機関やプログラムはたくさんあります。たとえば、日本外務省による外国青年招致事業(JETプログラム)および対日理解促進交流プログラム「 MIRAI」、あるいはドイツ国際ユースワーク専門機関(IJAB)が主催する専門家プログラムなどです。若者の外国滞在を仲介する民間の非営利・公益機関にはAFS Interkulturelle Begegnungen e. V(登記社団国際教育交流団体(AFS)異文化遭遇)やDeutsches Youth For Understanding Komitee e. V(登記社団YFUドイツ委員会)などがあり、外国でのボランティア業務を仲介する機関 Internationale Jugendgemeinschaftsdienste (ijgd) Bundesverein e. V(登記社団ドイツ国際青年コミュニティサービス)もあれば、ユースホステル間の交流やインターンシッププログラムもあります。ドイツ学術交流会(DAAD)の「Language and Practice in Japan」やヨーロッパの若者を対象とする「ヴルカヌス・イン・ヨーロッパプログラム」でインターンシップ先を仲介してもらうことも可能ですが、東アジア関連のインターンシップ先や求人先を無料で探せるプラットフォームKOPRAを利用して自分でみつけることもできます。

 日独間では音楽、文化、スポーツの分野でも活発な交流が展開されています。たとえば、Bundesvereinigung Kulturelle Kinder- und Jugendbildung (BKJ) e. V(登記社団ドイツ青少年文化教育)や Deutsche Sportjugend(ドイツスポーツユース)が企画実施する交流プログラムなどがあります。さらに、日独間に存在するさまざまな友好都市提携、姉妹都市関係、高校や大学レベルでの姉妹校関係、合計で100以上にのぼる日独協会・独日協会の枠組みにおいても日独の若者同士の出会いがみられます。

 2018年、全独独日協会連合会は青少年交流事業に資金を提供する財団を設立しました。地域に根ざした数多くの交流事業に加えて、地域を超えて活動する組織としてドイツ側には独日青少年協会(DJJG)、日本側には日独ユースネットワークがあり、共同で「ハロープログラム」などを企画・実施しています。

 また、Studienwerk für Deutsch-Japanischen Kulturaustausch in NRW e. V(登記社団ノルトライン・ヴェストファーレン州日独文化交流研究互助会)はデュッセルドルフ日本研究基金と協力して、毎年4週間の奨学プログラムを実施しています。コロナ禍の今年は、過去に本プログラムに参加したことのある同窓生がウェブイベント「Experience Japan digitally」(日本デジタル体験)を企画し、インタラクティブな分科会に分かれて「Urban Life 2.0」(アーバンライフ2.0)に関する多様なビジョンを共同で練り上げました。

 在独日本国大使館のウェブサイトは非営利・公益団体の交流プログラムや奨学金制度を網羅しています。ドイツ側情報源としては、ドイツ国際ユースワーク専門機関(IJAB)の日本のページEurodeskのページ、日本フェア「#Seitenwechsler – wir bringen dich nach Japan!」(サイドチェンジ――君を日本に送り出す)があります。本フェアでは独日青少年協会(DJJG)もブースを構え、さまざまな交流組織やプログラムを紹介しています。


デジタル空間での国際的な出会い

 残念ながら昨年も今年もコロナ禍の影響でほとんどの交流プログラムが従来どおりの形での実施を見合わせました。相手国を訪れる現場体験に勝る国際経験はないと思われるなか、相互訪問できない時代に国際交流を深めるにはどうしたら良いのでしょうか。ここに、テクノロジーの出番があります。ウェブを通じたビデオ会議やソーシャルネットワークサービス(SNS)でのコミュニケーションは、物理的距離を少なくともデジタルに簡単に克服する素晴らしい可能性を提供してくれます。

 ベルリン日独センターも他の多くの機関や組織と同様にテクノロジーを活用して国際会議をデジタル空間に移し、敷居の低い継続的な交流の場を提供することで人と人とのつながりが途絶えないように努めています。たとえば、青少年交流部はコロナ禍を契機に、過年度に参加したOB・OGを対象とするオンライン同窓会を立ち上げました。本同窓会に予想を上回る反響があったことに私たち自身驚いています。また、今年で50年目を迎えるプログラム「日独青少年指導者セミナー」でもウェブセミナーを開催して専門的な交流を効率的に維持するよう努めています。
 

ともに未来を切り開く

 コロナ禍後もデジタル化のメリットを一層活用し、これまで以上にさまざまな組織やプログラムの相乗効果を目指し、各交流事業の知名度が上がることが望まれます。今でも日独の若者は相手国に関心を示していますが、より多くの若者を取り込む大きな潜在的可能性があると思います。若い人たちに日独協力の可能性を示し、興味深い展望を紹介することを通じて、皆さまと一緒に未来を切り開いてゆければ幸いです。

文:ユリア・ミュンヒ(Dr. Julia MÜNCH)、ベルリン日独センター事務総長
翻訳:ベルリン日独センター
ベルリン日独センター機関紙jdzb echo 135号(2021年6月発行)掲載記事