日独交流160年の歴史を振り返る契機となった2021年が終わろうとしています。日独パートナーシップは、かつての貿易中心だったパートナーシップをはるかに超える強い協力関係に成長しました。今や日本とドイツは経済・ビジネス、学術・科学、文化、社会、政治の各レベルにおいて協力しています。日本とドイツの人々はグローバルな課題に対する革新的な解決策に共同で取り組み、自由貿易および人権尊重を基盤とするルールに基づく国際秩序の遵守に努めています。欧州連合(EU)と日本の戦略的パートナーシップの現状と展望に関しては、パトリシア・フロア駐日EU特命全権大使がベルリン日独センター機関紙「jdzb echo」最新号の巻頭寄稿文において興味深い見解を述べておられます(https://jdzb.de/sites/default/files/docs/2021-12/echo137j.pdf)。日本とドイツ・EUの間には政治的・経済的な接点だけでなく、個人レベルでも多彩で親密な絆が存在しています。
このような状況においてベルリン日独センターは会議系事業、各種講座、人的交流プログラムなどを通じて主要な出会いの場を提供する機関としての特別な役割を担っています。2021年には種々困難もありましたが、振り返ってみると良いこともたくさんありました。
1.新型コロナウイルスの流行により、ベルリン日独センターは多くの事業を中止するか、リアル開催を断念してウェブ開催に変更することを余儀なくされました。また、感染症への懸念から人と人とのコンタクトは極端に減り、国内旅行も日欧渡航もままならない状況がつづきました。今では誰もが個人的な対面交流を懐かしく思っているのではないでしょうか。しかしながら、ウェブ開催イベントでは日本やドイツからスピーカーを招聘することが簡単で、交流の敷居が低くなり、さらに事業のリーチも広がりました。ですから、ウェブイベントは従来のアナログイベントを補足するイベントないしは優れた代替イベントとも言えるのです。ベルリン日独センターも朗読会、コンサート、展覧会のオープニングイベント、青少年交流プログラム、人的交流事業の同窓会、各種講座、日独フォーラムをはじめ要人が集うシンポジウムなど合計60件以上の事業を主にウェブ開催で、また一部はハイブリッド開催で実現することができました。さまざまな事業の動画を YouTube チャンネルで公開しておりますので、ぜひご覧ください!(https://www.youtube.com/channel/UC-xgCm_F4JaPon7osnhJ4Bw)
2.展覧会および図書館ではほぼ一年を通して来訪者をお迎えすることができましたが、ベルリン日独センター全館に来訪者を迎え入れることができるようになったのは2021年半ばにベルリン州政府の感染症対策ルールが緩和されてからです。慎重に開館した後の事業で、私自身が今年のハイライトのひとつと思う事業は Open Week(オープンウィーク)です。ベルリン日独センター建物を実験的に使用し、(潜在的な)協力機関との対話を開始し、それら協力機関の期待やニーズをより的確に把握し、潜在的な可能性を見極め、協力の可能性を探るための実験的な一週間、前向きなエネルギーが満ち溢れていた一週間でした!オープンウィークの報告は私のブログ投稿(https://jdzb.de/ja/blog/71034)をご参照ください。
3.また、とりわけ喜ばしく感じたのは、さまざまな機関がベルリン日独センターを会場にイベントを開催されたことです。たとえば、登記社団 Sake Embassy Germany がベルリン日独センターで開催した「Sake Week Berlin」の華やかで活気溢れるオープニングイベントについてはファッションジャーナリストの宮沢香奈氏が報告されています(https://senken.co.jp/posts/kmiyazawa94?fbclid=IwAR3_tPNjFTej5iwZNFYW-5ISrV5IKwwO-aDYBUQp6-yTunBscMab89Jzjn4)。あるいはまた、日本貿易振興機構(JETRO)とドイツ貿易投資振興機関(GTAI)による「German-Japanese Innovation Initiatives 160」(日独イノベーション・イニシアティブ160、英語:https://www.marketsgermany.com/japan-and-germany-launch-new-joint-business-initiatives/)のキックオフイベントもベルリン日独センターを会場に開催されました。司会進行はじめプログラム演目の大半は会場でリアルに、600人以上の参加者は自宅ないしは事務所の画面からウェブ参加されたハイブリッドのイベントでした。
4.ベルリン日独センター図書館はメッツラー銀行および無印良品から常設のイベントステージや快適なビーズソファーをご寄付いただいたお陰もあり、人と人が出会える現代的な情報ラウンジに生まれ変わりました。
5.秋には三菱電機ドイツ支社がベルリン日独センターの新たな協力機関としてベルリン日独センター館内に駐在事務所を開設し、同社のコーポレートシチズンシップ(企業市民)活動の一環としてベルリン日独センターの未来に投資してくださることになりました。駐在事務所の開設に関してはベルリン・モルゲンポスト紙でも報道されました(ドイツ語:https://www.morgenpost.de/berlin/article233531621/Mitsubishi-eroeffnet-Kooperationsbuero-in-Berlin.html)。
6.ベルリン日独センターは産業界以外でも協力機関を求めています。たとえば独日協会連合会(ドイツ語:www.vdjg.de)と今後はより緊密に協力し、国際的なパートナーシップに大きく貢献する市民社会との関係を一層強化してゆく所存です。詳しくは近日公開します!
7.リニューアルしたウェブサイトを春に一般公開しましたが、サイト内に設けたブログでは日独交流の懸け橋をわたった人ないしは今なおわたっている人を紹介するコラムをスタートしました。直近では中根猛ベルリン日独センター総裁による東山魁夷画伯を紹介するエッセイをアップしましたのでぜひご一読ください(https://jdzb.de/ja/blog/71048)。
8.ベルリン日独センター全体理事会および評議会の秋の定例会議では、今後はベルリン日独センター建物を積極的に一般に開放し、外部機関にもプラットフォームとしてご利用いただくための企画案が全会一致で承認されました。これは戦略的再編のための重要なステップです!
9.ベルリン日独センターは財団基金の運用益で事業費の一部を賄う公益非営利財団です。したがって、長年継続中の低金利状況はベルリン日独センターにとっても長年の懸案事項でありますが、この問題にはクリエイティブに対応し、革新的なパートナーシップ締結やビジネスモデル確立を通じた解決策を模索したく、常にオープンにアイデアを募集したいと思います。ベルリン日独センターが新たな協力機関を開拓するこのような道を歩むことを財団母体である日本国政府、ドイツ政府、ベルリン州政府、そしてまた全体理事会理事、評議会評議員が歓迎するだけでなく側面から支援し、あるいは積極的に参画してくださることに感謝します。
10.ベルリン日独センターにとって、現状は自己改革をするチャンスでもあります。この一年の再編過程でベルリン日独センター所員一同の労働負担等は増えましたが、誰もが意図的に自分のコンフォートゾーン(快適で居心地の良い慣れ親しんだ場所)から抜け出し、脱皮を繰り返し成長しました。来年もそのエネルギーと自信を維持することを期待しつつ、この場を借りて所員一同にも感謝します!
最後になりましたが、この一年間ベルリン日独センターを信頼し、応援し、支えてくださったすべての方々に、ベルリン日独センターを代表して心から御礼申し上げます。2022年には戦略的再編をつづけるだけでなく、皆さま方にお楽しみいただける多彩な企画も用意いたしました。日独パートナーシップの精神で、これからもなにとぞよろしくお願いいたします!
皆さまの明るい健やかな新年を祈念いたします。
ユリア・ミュンヒ
文:ユリア・ミュンヒ(Dr. Julia MÜNCH)、ベルリン日独センター事務総長