ベルリン日独センター・フォーカスウィーク2022年「知識文化」
2022年9月12日~16日
「知識文化」(knowledge culture)は多面的要素をもつ領域です。そのなかでベルリン日独センターがフォーカスを合わせるのは、知識の意義との関わり方、そしてまた知識の生成、伝達、応用のあり方の背景を探る領域です。とりわけ興味深いと考えるのは、デジタル情報が氾濫する現下の状況に直面し、人が知識を選択し吸収する様が変化するトランスフォーメーションプロセス(変遷過程)です。知識をどのように消費するのか、知識消費に伴う複雑さにどのように対応するのか、そもそもそれは可能なのか。もしかしたら世界は賢くなるというより、むしろ愚かになっていくのではないか。新たなツールを用いて創造的な可能性を開花させることができるのか。それともワッツアップとインスタグラムに時間を割かれるために集中力の持続時間が短縮するにともない、知識水準も低下していくのか。
このような疑問に対する回答を模索するに当たりベルリン日独センターは、日本とドイツとの関連性を常に念頭に置いたイベントウィークを開催します。若い人たちによる文学的取り組みから、日本、フランス、ドイツの学校におけるeラーニングについて学界、行政、実務の視点からの議論会にいたるまで、来場者に多様なアプローチとイベントを提供するイベントウィークです。一週間全体のテーマは、日本とドイツにおける知識社会(knowledge society)のさらなる発展と、グローバルな知識構造(knowledge structure)の作用です。また、オープンイノベーションプロセスなどを通じて企業が知識を広げていく方法にも注目したいと思います。
さまざまなパートナー機関の協力を得てベルリン日独センターのスタッフが一丸となって挑むフォーカスウィークに、ぜひご来場ください。ネットワーキングや活発な交流の多彩な機会を、お見逃しなく!
プログラム
日独産業協会主催ビジネスミーティング「昼の会」――Global Knowledge Infrastructure – Growth Through Sharing? Approaching an Intercultural, Digital Knowledge Network(グローバルナレッジインフラ――共有による成長は可能か?異文化・デジタル知識ネットワークへのアプローチ)2022年9月13日(火)
数字、データ、ファクト(事実)の圧倒的な量はさらに増大しつづけ、科学的知識の生成スピードはますます加速しています。それと同時に知識へのアクセスは、オープンソースプロジェクトを通じて一層グローバルかつデジタルになりました。その際、知識は信頼性が高く、検証済みで、容易にアクセス可能なものでなければなりません。
安定した知識インフラを構築し――そして構築するよりおそらく一層重要なこととして――きちんと維持するためには、どうしたら良いのでしょうか。日独の異文化が協力し、日独の異文化を背景とする社会のためにこのようなインフラを提供することの難しはなんでしょうか。デジタルトランスフォーメーション(DX)における知識の増加と検証には、どのような可能性があるのでしょうか。
ベルリン日独センターの長年の協力機関である日独産業協会をベルリンにお迎えし、以上の質問をはじめさまざまな疑問をフランツ・ヴァルデンベルガー教授(Prof. Dr. Franz WALDENBERGER、ドイツ日本研究所所長)およびトーマス・エルム氏(Thomas ELM、有限会社 Goodpatch 欧州担当マネジングディレクター)のお二人による示唆に富む挑発的な対談を叩き台とし、皆さまと議論できることを楽しみにしています。
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Japan Spoken Word Night、2022年9月13日(火)
日本および日本語と、文学的にあるいはアーティスティックに関わってみたい方は、ぜひ Japan Spoken Word Night にお越しください。ベルリン日独センター2022年フォーカスウィークのテーマ「知識文化」を取り上げ、発表や朗読において「裏――隠されているもの」、すなわち知識や文化の背後にある崇高なもの、ほとんど理解不可能なもの、意識の片隅に存在するものに迫りたく、登壇者を募集中です。
→ ドイツ語、日本語または英語による5分前後の朗読で参加ご希望の方のお問い合わせおよびお申し込みはヴェガレ(Ms Sabrina WÄGERLE、swaegerle@jdzb.de)までお願いいたします。
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パネルトーク「フンボルト・フォーラムの茶室と金沢がつなぐ茶の湯~建築~工芸」、2022年9月14日(水)
フンボルト・フォーラムの茶室監修をした裏千家・工芸家の奈良宗久氏、建築家浦淳氏、陶芸家の中村卓夫氏、金属造形作家の坂井直樹氏の4名が、このたびフンボルト・フォーラムの東館のオープニングにあわせて金沢からベルリンを来訪します。ベルリン日独センターにおいてはパネルトークを開催し、茶の湯の伝統に基づいた現代の工芸建築であるフンボルト・フォーラムの茶室の成立経緯、また茶室に取り入れられている金沢の工芸技術について語っていただきます。最初にフンボルト・フォーラム財団建設・技術担当理事のハンス=ディータ・へーグナー氏にご挨拶をいただき、アジア美術館日本美術キューレータのアレクサンダー・ホーフマン氏の司会により、日本における「知識文化」の継承に関する具体例について茶室建築チームの興味深いトークを、ぜひお楽しみください。
→ 参加をご希望の方は、こちらのサイトからお申し込みください:https://gstoo.de/JDZB_Wissenskultur_Teehaus
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国際シンポジウム「Digital Learning in School Education: Perspectives from Japan, France, and Germany」(学校教育におけるeラーニング――日本、フランス、ドイツの視点)、2022年9月16日(金)
コロナ禍の間、世界中の学校生徒は突如自宅でリモート学習をする現実に直面しました。そしてまた、教育機関が依然としてデジタル化で遅れを取っている現実も浮き彫りになりました。多くの領域で不備がみられ、かなりの遅滞があるにもかかわらず、今や教育施設における学習の全般的なデジタル化を止めることは不可能です。教育のデジタル化は知識の伝達や教育の意義そのものに大きな影響を与えることになるでしょう。デジタル化にともなう技術的な課題もさることながら、社会的な影響も軽視できません。だからこそ、政策立案者や教育分野の専門家にはデジタル化プロセスを設計し、組織化し、実施する責任があるのです。デジタル化は学校の校長や教員の業務に大きな影響を与えますが、それ以上に勉強に対するアプローチが一人ひとり異なる生徒に及ぶ影響を重視すべきでしょう。教育のデジタル化は、社会の未来に直接関わる課題なのです。
本国際シンポジウムでは、学校教育におけるeラーニングに関わる以下の三つの視点を、日本、フランス、ドイツの三ヶ国で比較考察します。
- 学術的視点:特に社会的側面からeラーニングのメリットとデメリットを評価(パネル)
- 政府戦略に関する政策立案者の視点:学習と学校教育のデジタル化は各々のレベルにおいて現在どのように組織化され、近い将来どのように展開されるのか(ラウンドテーブル)
- 教室の視点:eラーニングのツールを実践的に使用する際の経験および懸念(ラウンドテーブル)
本シンポジウムは「日本に関する独仏対話」の3回目の会合として、ベルリン日独センターとパリの国立社会科学高等研究院(EHESS)所属の日仏財団が共同で開催するものです。シンポジウムで使用する言語は英語です。
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日独学生青年リーダー交流プログラム(ウェブ開催、非公開事業)
ベルリン日独センター・フォーカスウィークの期間中、独連邦家庭高齢者女性青少年省委託による「日独学生青年リーダー交流プログラム」をウェブ開催します。ボランティア活動に熱心な日独の若者がバーチャル空間に集い、「若者の社会参画」をテーマに青少年指導者や若者育成専門家と意見を交流し、社会参画のための方法を学び、関連施設をバーチャル訪問し、ともに討議するプログラムです。このような国際間の経験・知識の交流は「知識文化」の実践例と言えましょう。
2022年09月12日
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2022年09月16日
JDZB
情報
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